『チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしない事を恐れろ。』 本田宗一郎
運命の歯車は音をたてずに回る。しかし、僕には聞こえたのである。
『自分の髪の毛で筆……つくってみよっ?』
という内なる声と共に。
青天の霹靂とはこの事であろうか。身体に衝撃が走り、気づけば笑みを絶やさずにいる自分に気
が付いた。僕は自分の所属するモルグモルマルモが2018年で10周年を迎えるという事で、個人的
に何かお祝いはできないかと模索し続けていた、2017年秋の出来事であった。
思い立ったが吉日、僕はこの素晴らしいアイデアに賛同してくれそうな人間を脳内で検索し始めた。
一人いた。
尋常な行動力と、異常なバンド愛(特に関西)をもち、比較的僕の話をちゃんと聞いてくれる人
間。下北と名乗るおっさんだ。下北沢ブロイラー、316等で発信力も持っている。この壮大なア
イデアを実現するのに利用する以外ない。見た目はキョンシーに出てくるスイカ頭に似ている。
その中年スイカ頭にこの素晴らしいアイデアを話した。
意外にも反応が悪い。何故だ。
『無理ですよー』とか言ってる。こいつは駄目だ。まだこの素晴らしいアイデアの素晴らしさに気
づいていない。この素晴らしいアイデアはほんとに素晴らしいのに。皆が僕の髪の毛で出来た筆
をもちニッコリ微笑み合う未来が何故見えない。未覚醒者だ。僕が目を覚まさせるしかない。
そうして僕は事あるごとに、会う度に
『ふでぇ~ふでぇ~ぼくの~かみのけでできたぁやつぅ~』
と目をむき、涎をたらしながら言い続けた。
そうすると、ある日
『これに好き勝手書いてください』
と連絡がきた。
それがこのブログだ。あいつ、手ぇぬきやがった。手に負えないから勝手にやってね、というメッ
セージと受け取る。
しかし、ピンチはチャンス、チャンスはピンチ。この難局を乗り切るにはうってつけの機会ではな
いだろうか、と考えた。
僕はもう自毛筆をつくりはじめようと思う。賽は投げられたのだ。
そして僕はこのブログを通して自毛筆の作り方を皆様に教授する。
そして僕のこの崇高かつ神聖な行為に感銘を受けた、数千、数万の覚醒者達が僕に続くことを望
む。
お祝い事には筆!自分の髪の毛で出来た筆を送ろう!
『抜錨』 深田和良
悠久の大海原に出航する
小さい小さいタイニーボートに帆を張る
乗組員は僕一人
寂しさは港に置いていこう
さあいこう あの筆の彼方へ
雄大でロマンチックなポエムをしたため、何をすべきか僕は考えた。
手始めに僕は猫を飼う事にした