普段はステージ後方で黙々とビートを刻み、バンドを支えるドラマー。そんな縁の下の力持ちが、まばゆいスポットライトを浴び高らかに歌うイベントがあるという。
それが、10月11日(木)下北沢THREEで開催される『歌え!ドラマー達! Vol.8』だ。その名の通り、ドラマーたちがスティックからギターやキーボードに持ち替え、歌い、時には踊る。
今回はそんなアヤシイ……もといユニークなイベントの主催者に話を伺った。
○主催者は“自転車に乗りながら歌うドラマー“
「『歌え!ドラマー達!』という企画に、自転車に乗りながら歌う男が参加するらしい。しかも彼がイベントの主催者、いや主犯なのだ……」
そんな情報をジャックした筆者(自転車と音楽大好き)は、8月某日、京都のとあるカフェでその人物と落ち合った。長めのパーマにオサレハット。その人物はたしかに一見アヤシイ男だった。
主犯F:今日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます。
―――あ……いえ、こちらこそお時間を作っていただきありがとうございます。
イメージを裏切る美声におののく。思わずかしこまってしまったが、今日は『歌え!ドラマー達!』という胡散臭いイベントの正体を暴きにやってきたのだ。日和るわけにはいかない。
―――突然ですがあなた、自転車に乗りながら歌うそうですね?しかもドラマーなのに。そりゃあ一体どういうことですか?
主犯F:……“自転車が好きだ!”という気持ちを伝えたくてッ!やっちゃったんです。僕が大好きな自転車、そして音楽を組み合わせたらどうなっちゃうんだろうと思って!
「雨のocean road」@西院ネガポジ pic.twitter.com/GKHxvGQcKF
— 深田和良 (@fukadance0815) 2018年7月10日
なんという純粋な瞳、単純な思考なのだろう。胡散臭いパーマ男が一瞬にして、「夏休みにサイズの大きいママチャリを必死に漕ぐ小学生」に見えてきた。
○1分でわかる!『歌え!ドラマー達!』という野望
この男、名を深田和良という。京都でカフェを営むかたわら、モルグモルマルモのドラマーとしてバンド活動に熱を注いでいる。
『歌え!ドラマー達!』はそんな深田が立ち上げたイベント。通常は京都・西院ネガポジで開催しているが、2018年10月11日(木)には東京・下北沢THREEで2回目となる東京開催が行われる。
―――はじめに、1分でわかる『歌え!ドラマー達!』的な説明をお願いします。
深田:『歌え!ドラマー達!』は、まさにそのままの意味です。出演ルールとして、このようなものがあります。
1、ドラマーであること
2、楽器はなんでも可
3、持ち時間は一人あたり5分から可
4、助っ人、カラオケも可能!とにかく歌え!
5、オリジナル曲推奨(コピー可)
……ざっとこんな感じですかね。
―――なかなかゆる〜いルールですね。とにかく「歌え!」という勢いを感じます。
深田:そうなんです。僕はこのイベントでムーブメントを起こしたいんですよ!
―――む、ムーブメント?!
深田:僕が作りたいのは「ドラマーが歌う」というムーブメント、いわばひとつの文化なんです。ドラマーって真面目で素直な奴が多いんですよ。そして、意外にもいい歌を歌う。「上手い=いい歌」とはちょっと違う、人柄が伝わってくる弾き語りをするんです。
―――なるほど、ご自身がドラマーだからこそわかる味わい深さなんですね。そもそもこのイベントを考えついたキッカケは何だったのですか?
深田:個人的に「ドラムがうまく叩けない」と悩んだ時期がありました。いくら練習しても解決せず、ひたすら悩みは深くなるばかり……。そんなときに恩師から言われたんです。「お前、歌えや」と。
―――はじまりは恩師の教えだったのですね。
深田:歌ってみると、全然違う視点で音楽を見ることができたんです。ドラムや演奏技術以外の視点で音楽を見つめ直せた。そこから自分自身で作詞作曲にハマり、ドラムのスランプからも脱出したんです。
そんな僕の経験から、ドラマーは歌うべきだ、と。そしてイベントを企画しては嫌がる後輩を囲い込み、出演させたりしてます!(※)
―――なるほど、ちょっと嫌らしい力関係を感じたぞ!いいぞ、もっとやれ!
(※)「嫌がる後輩を囲い込み〜」は誇張表現です。出演者みなが、和気あいあいと楽しく演奏している平和なイベント、それが『歌え!ドラマー達!』です。
○むしろパクってほしい。「ドラマーが歌う」文化を東京でも
―――普段は京都で開催している当イベントですが、今回で2回目の東京開催なんですよね?
深田:東京では去年に続き2回目、イベント自体はトータルで8回目になります。プロアマ問わず、より多くのドラマー達を巻き込み、一大ムーブメント化を目論んだ結果、今年も東京進出することになりました。
―――夢はでっかく「プロドラマーも歌え!」ですか!
深田:そうです!いっそ、このイベントをいろんなところでパクってほしいんです。僕の知らないところで、ドラマーが歌うイベントが自然発生すれば嬉しいですね。
―――まさに、ドラマーの・ドラマーによる・ドラマーと観客のためのイベント。そしてパクってほしい、つまり文化として浸透してほしいということですね。
○自転車野郎にラブドール?見どころ満載?の第8回目
―――続いて、このアヤシイ集会……いやイベント、ずばり見どころを教えてください。
深田:普段見せないドラマー達の表情、声、そして歌詞、ですね。
―――ほう、歌詞ですか。
深田:さっきも言ったように、ドラマーには真面目で素直な人が多くって。そんな彼らが紡ぐ言葉は、思っている以上に心に響くんですよ。
―――だからこそ、「オリジナル推奨」?
深田:コピーも可だけど、やっぱりオリジナル曲がいい味出すんですよね。京都から連れていくノマノタロウくんのラブドールの歌とか。僕ももちろん、自転車乗りながら自転車の歌を歌います!
―――それはいい味というよりも、危険な自己解放なのでは……?あとは、普段脚光を浴びることのないドラマー達がピンでステージに立たされて慌てふためき恥じらう姿も一興ですね!
○ノれるもんにはなんでもノる!特別割引実施&下北沢カレーフェスティバルにも参戦
さらに話を聞くと、さまざまな情報をわんさか入手することができた。中でも衝撃的な言葉がこれである。
深田:当日のチケットでドラマー割とサイクリスト割をします。これらに該当するお客さんは、本来2500円だったところが……なんと1000円になります!
―――え、その割引率はただ算数が苦手だっただけなのでは?大丈夫ですか?
深田:一回言ってしまったことは撤回しないのがポリシーですから。両方自己申告制なので「ドラム叩いてます」「自転車乗ってます」と言ってもらえれば割り引きます!
―――なんという性善説論法……。ちなみに深田さんの自転車の乗り方をお伺いしてもいいですか?
(※)筆者の自転車歴は7年、ロードレース競技から旅に転向し、今では野営ツーリングを楽しんでいる。
深田:僕の自転車歴はまだ1年程度ですが自転車愛なら負けませんよ!今はシングルギアのバイクで近所の峠を登ってますね。(訳:米袋10kgを担ぎながら、九十九里浜をランニングするレベルのドM)
―――あっ……変態さん方面の自転車乗りでしたか。こいつは失敬。
深田:さらに!『歌え!ドラマー達』と同時開催の下北沢カレーフェスティバルにも参戦予定です。僕が店長を務めるカフェタイガーのメニュー、「麻婆豆腐カレー丼」を当日限定で500円にて食べることができます!
―――ええと、麻婆豆腐にカレー?なかなか想像できない味ですね。
深田:まあまあ、とりあえず試食してみてくださいよ!
動画をご覧いただければわかるように、筆者も『麻婆豆腐カレー丼』をいただいた。中華とエスニックが融合した摩訶不思議な美味しさ!さらに『自家製花椒ラー油』が癖になる~!これはオススメ!
○『歌え!ドラマー達!Vol.8@下北沢THREE 10/11(木)』の情報まとめ
……というわけで主催者・深田氏を直撃した結果、『歌え!ドラマー達!』がどれだけ濃密濃厚・特異なイベントかご理解いただけたと思う。今一度、振り返ってみよう。
【『歌え!ドラマー達!』とは】
ドラマー達が思いの丈を歌い上げるステージ
【主催者・深田和良】
ドMの変態だが、ドラマーとしての信念は美しく立派な男。
【当日の見どころ】
普段は決して主役になれないドラマー達の光り輝く姿に注目!じてんしゃにのりながらうたうぞ!らぶどーるのうたもあるらしいぞ!
【割引あるよ!】
完全自己申告のドラマー割とサイクリスト割あり。2500円→1000円という、採算度外視の割引。
【下北沢カレーフェスティバルにも乗っかる】
当日限定!カフェタイガーオリジナルの『麻婆豆腐カレー丼』を食べられるチャンス。価格は500円!
果たしてどんな一夜になるのだろう。取材を終えた今でも謎は深まるばかりだ。
京都からとっておきの刺客、スティックを握らぬドラマー達が10月11日(木)に下北沢THREEに集結する。
一抹の不安、それをはるか凌駕する期待を胸に、続報を待たれよ!!
取材・執筆/おゝしろ実結
自転車や食、離島の物書き。Webや専門雑誌で執筆中。自転車歴7年で主な活動場はオフシーズンのキャンプ場。近日中にMTBとブロンプロンをこしらえようかと検討中。ひっそりとカレーが好きで、東京・神田界隈のカレー屋事情に精通している。
Twitter:@moshiroa1/Webサイト:https://miyuo10qk.wixsite.com/miyuoshiro
協力/五十嵐綾子、野間野太郎